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東京家庭裁判所 昭和56年(家)3876号 審判

昭56(家)3876号申立人 亡大竹伸之介承継人 大竹トヨ

昭56(家)3876号申立人 亡大竹伸之介承継人 平元(家)11995号申立人 大竹友和 外2名

昭56(家)3876号申立人 平元(家)11995号申立人 大竹幸一郎 外2名

昭56(家)3876号相手方 平元(家)11995号相手方 我妻さち 外2名

被相続人 大竹金吾郎 外1名

主文

1  被相続人両名の遺産を次のとおり分割する。

(1)  別紙目録(編略)第1の1、2記載の土地は、申立人大竹吾郎及び同大竹仁一が各2分の1の割合により共有取得する。

(2)  同目録第1の3記載の土地は、申立人大竹トヨ及び同大竹幸一郎が各4分の1、同大竹友和、同広田美和子及び同大竹健介が各6分の1の割合により共有取得する。

(3)  同目録1の4、9記載の土地は、相手方我妻さちが取得する。

(4)  同目録第1の5、10、11記載の土地は、相手方大竹真紀子が取得する。

(5)  同目録第1の6記載の土地、同12、13記載の土地の共有持分6分の1、同目録第2の1記載の建物は、相手方大竹光三が取得する。

(6)  同目録第1の7記載の土地の共有持分8分の4は、申立人大竹吾郎が取得する。

(7)  同目録第1の8記載の土地の共有持分8分の4は、申立人大竹仁一が取得する。

(8)  同目録第3の1記載のゴルフ会員権は、相手方大竹真紀子が取得する。

(9)  同目録第3の2記載の株式については、被相続人大竹金吾郎名義の1万3360株のうち、170株を申立人大竹トヨが、各260株を申立人大竹友和、同広田美和子及び同大竹健介が、3000株を申立人大竹幸一郎が、3300株を申立人大竹吾郎が、3250株を申立人大竹仁一が、600株を相手方我妻さちが、1000株を相手方大竹真紀子が、1260株を相手方大竹光三が、被相続人大竹とめ名義の1665株は、各555株を申立人大竹幸一郎、同大竹吾郎及び同大竹仁一がそれぞれ取得する。

(10)  同目録第4記載の現金は、申立人大竹幸一郎が取得する。

(11)  同目録第5記載の動産は、申立人大竹トヨが取得する。

2  上記遺産取得の代償として、申立人大竹幸一郎は相手方我妻さちに対し金2697万2017円、申立人大竹吾郎は相手方大竹真紀子に対し金2529万8117円、申立人大竹仁一は申立人大竹トヨに対し金23万6392円、申立人大竹友和、同広田美和子及び同大竹健介に対し各金37万7390円、相手方我妻さちに対し金1062万7265円、相手方大竹真紀子に対し金1549万3365円、相手方大竹光三に対し金13万3325円をそれぞれ支払え。

3  申立人大竹幸一郎は相手方大竹真紀子に対し、別紙目録第1の10記載の土地について、遺産分割を原因として所有権移転登記手続をせよ。

4  本件手続費用中、鑑定人に支払った金397万円の償還として、相手方我妻さちは申立人大竹幸一郎に対し金15万円、相手方大竹真紀子は申立人大竹吾郎に対し金15万円、相手方大竹光三は申立人大竹トヨに対し金25万円、申立人大竹幸一郎及び同大竹吾郎に対し各金10万円、申立人大竹仁一に対し金25万円を支払え。その余の手続費用は各自の負担とする。

理由

一件記録に基づく当裁判所の事実上及び法律上の判断は、次のとおりである。

第1相続の開始、当事者とその相続分

1  被相続人大竹金吾郎(明治36年4月19日生)は、昭和2年1月19日被相続人大竹とめ(明治37年12月20日生)と婚姻し、長男である亡大竹伸之介(昭和2年1月10日生)、二男である申立人大竹幸一郎(昭和3年12月20日生)、長女である相手方我妻さち(昭和5年7月19日生)、三男である申立人大竹吾郎(昭和7年8月25日生)、四男である申立人大竹仁一(昭和9年12月26日生)、五男である相手方大竹光三(昭和17年5月5日生)及び二女である相手方大竹真紀子(昭和20年5月20日生)をもうけたが、昭和51年12月1日死亡した(以下「第一次相続」ともいう。)。

2  亡伸之介は、昭和30年12月14日申立人大竹卜ヨ(昭和6年8月1日生)と婚姻し、長男である申立人大竹友和(昭和36年12月23日生)、長女である申立人広田美和子(昭和39年6月18日生)及び二男である申立人大竹健介(昭和43年5月29日生)をもうけたが、昭和56年10月20日死亡した。

3  被相続人とめは、昭和57年3月17日死亡した(以下「第二次相続」ともいう。)。

4  被相続人金吾郎の適法な遺言はないので、同人の相続に関しては、被相続人とめが3分の1、申立人トヨが21分の1、同友和、同美和子及び同健介が各63分の1、同幸一郎、同吾郎、同仁一及び相手方ら3名が各21分の2の法定相続分となる。

5  被相続人とめは、昭和55年1月1日付で「一、私の所有する○○△△△△△工業株式会社の株式全部6660株を、亡伸之介、申立人幸一郎、同吾郎及び同仁一に各1665株宛相続させる。二、相手方さち、同光三及び同真紀子には、遺産を相続させない。」との公正証書遺言をした。 第二項の遺言の趣旨は、相手方らの相続分を零と指定したものであると解するのが相当である。そして、相手方さち及び同真紀子(以下「相手方両名」ともいう。)は、申立人トヨを除く申立人らに対し、適法な遺留分減殺の意思表示をしているので、これより遺言でなされた上記両名に対する相続分の零指定はその遺留分を侵害する限度において効力を失う。この結果、被相続人とめの相続に関しては、申立人友和、同美和子、同健介、相手方さち及び同真紀子が各14分1、申立人幸一郎、同吾郎及び同仁一が各14分の3の相続分となり、相手方光三は相続分がないことになる。

第2遺産の範囲

1  (1) 別紙目録第1の1ないし6、9ないし11記載の土地、同目録第2の1記載の建物が被相続人金吾郎の分割の対象となる遺言であることに争いがなく、一件記録によってもこれを認めることができる。

なお、同目録第2の2記載の建物も被相続人金吾郎の遺産であるが、同建物が老朽化してその一部が取り壊されていることから、これについては分割の対象から除外し、その敷地である同目録第1の3記載の土地の評価を更地価格とすることで全員が合意している。

(2) 同目録第1の7、8記載の土地の共有持分8分の4、同目録第1の12、13記載の土地の共有持分6分の1が被相続人金吾郎の分割の対象となる遺産であることに争いがなく、一件記録によってもこれを認めることができるところ、相手方さち及び同真紀子(以下「相手方両名」ともいう。)は、上記土地全部が被相続人金吾郎の遺産であると主張しているほか、同目録第1の17ないし20記載の土地が被相続人金吾郎の遺産であり(少なくともその共有持分1000分の415が被相続人金吾郎の遺産である)、同目録第1の21、22記載の土地も被相続人金吾郎の遺産であると主張している。

(3) 同目録第3の1記載のゴルフ会員権、同目録第4の1記載の現金60万円(○○産業株式会社の株式1万5000株を昭和59年5月に合計60万円で売却したもので、右売却代金を分割の対象とすることに当事者全員が合意している。)、同目録第4の2記載の現金10万円、同目録第5記載の動産が、いずれも被相続人金吾郎の分割の対象となる遺産であることに争いがなく、一件記録によってもこれを認めることができる。

(4) 同目録第3の2記載の株式については、申立人らが被相続人金吾郎の遺産として1万3360株、被相続人とめの遺産として6660株と主張するのに対し、相手方両名は4万株金部が被相続人金吾郎の遺産であると主張している。

(5) ○○(同目録第1の4記載の土地)、△△(同目録第1の5記載の土地)からの地代、○○△△△△△工業株式会社(以下「本件会社」ともいう。)からの地代(同目録第1の1、2記載の土地)、家賃(同目録第2の2記載の建物)については、いずれも被相続人両名の分割の対象となる遺産から除外することで全員が合意している。

(6) 被相続人両名は、その相続開始当時、預金を有していたが、相手方両名が○○相互銀行との間で昭和59年2月29日の訴訟上の和解により法定相続分の支払いを受けたことから、その後間もなく他の相続人もこれをすべて解約払い戻して法定相続分に従い取得しており、現存するものはない。

被相続人金吾郎の本件会社からの未払給与100万円、退職金1500万円、年金15万5540円、被相続人とめの現金388万9210円、年金11万7566円はいずれも上記解約された預金に繰り入れられていたものであり、また、被相続人とめの本件会社からの未払給与70万円はその一部が同様に預金に繰り入れられ、残金は葬式費用等に費消され、いずれも現存するものでない。

(7) 相手方両名は、○○製鋼株式会社の株式1万株が被相続人金吾郎の遺産であると主張するが、これを認めるに足りる証拠はない。

(8) その余の被相続人両名の動産類については、これを分割の対象から除外することで全員が合意しており、他に分割の対象となる遺産はない。

2  (1) 別紙目録第1の21、22記載の土地について

上記土地は、昭和39年9月24日、亡伸之介、申立人幸一郎、申立人吾郎、申立人仁一(以下、この4名を「亡伸之介ら4名」ともいう。)が持分各4分1で売買により取得した旨登記されているところ、C甲第6ないし8号証、申立人吾郎本人審問の結果等によると、亡伸之介ら4名は、○○銀行の同人ら名義の普通預金(この預金は同人らの本件会社からの給料の一部を預金したものであることは後記のとおりである。なお、申立人吾郎の当時の通帳は提出されていないが、その口座番号からみて同人の預金口座も存在したものと認められる。)より87万5000円ずつを払い戻して、上記土地を購入したものと認められる。

したがって、これはいずれも遺産ではない。

(2) 別紙目録第1の7、8記載の土地について、

上記土地は、昭和40年3月22日、被相続人金吾郎が持分2分の1、亡伸之介ら4名が持分各8分の1で売買により取得した旨登記されているところ、上記証拠によると、(1)と同様にそれぞれの資金により取得したものと認められる。

したがって、被相続人金吾郎の分割の対象となる遺産は上記土地の持分2分の1である。

(3) 別紙目録第1の17ないし20記載の土地について

昭和40年4月8目、同目録第1の17記載の土地が申立人幸一郎名義で、同18記載の土地が申立人吾郎名義で、同14、15、19記載の土地が被相続人金吾郎名義で、同20記載の土地が申立人仁一名義で、同16記載の土地が亡伸之介名義で条件付所有権移転登記され、これらの土地について、同年6月8日上記登記が抹消されて同月10日被相続人金吾郎、亡伸之介ら4名の5名が各持分5分の1で売買により取得した旨登記され、さらに、同年7月15日、錯誤により抹消されて、被相続人金吾郎が持分1000分の415、亡伸之介が持分1000分の169、申立人幸一郎が持分1000分の168、申立人吾郎が持分1000分の152、申立人仁一が持分1000分の96で売買により取得した旨登記され、昭和44年1月16日、同14ないし16の3筆の土地が○○○○○○○社に売却された旨登記されているところ、C甲第6ないし8号証、第31ないし35号証、第41号証、申立人幸一郎及び申立人吾郎各本人審問の結果等によると、(1)と同様にそれぞれの資金により、被相続人金吾郎が同14、15、19記載の土地を、亡伸之介が同16記載の土地を、申立人幸一郎が同17記載の土地を、申立人吾郎が同18記載の土地を、申立人仁一が同20記載の土地を購入したものであり、その後、被相続人金吾郎において亡伸之介に無断で同人所有の同16記載の土地を売却したことから、昭和51年2月ころ、その代わりに、被相続人金吾郎は亡伸之介に同19記載の土地を贈与したものと認めることができる。

したがって、別紙目録第1の17ないし20記載の土地は遺産ではない。

(4) 別紙目録第1の12、13記載の土地について

上記土地は、昭和50年2月6日及び18日、被相続人金吾郎、亡伸之介ら4名及び相手方光三の6名が持分各6分の1で売買により取得した旨登記されているところ、C甲第10号証の1、2、第46、47号証、申立人吾郎本人審問の結果等によると、株式会社○○相互銀行から上記6名がそれぞれ400万円ずつを借り入れてこれを取得したものと認められる。

したがって、被相続人金吾郎の分割の対象となる遺産は上記土地の持分6分の1である。

3  本件会社の株式について

C甲第37号証、第41、42号証、第50ないし78号証、申立人吾郎本人審問の結果等によると、本件会社は、昭和30年1月17日設立された○○△△△△△有限会社を後に組織変更したものであるが、その設立の際には、被相続人金吾郎が1000口、亡伸之介ら4名及び石田満が各100口出資したこと、石田名義についてはともかく、亡伸之介ら4名の分は、被相続人とめが管理していた同人らがこれまで家業に従事して得た小遣いないし給料が充てられたこと、その後の出資持分譲受け、増資についても相手方光三を含めて亡伸之介ら4名がその資金で取得したこと、その結果、昭和42年12月には、被相続人金吾郎が1万3360株、被相続人とめが6660株、亡伸之介及び申立人幸一郎が各4260株、申立人吾郎及び同仁一が各4000株、相手方光三が3460株となったことが認められる。

したがって、本件会社の1万3360株が被相続人金吾郎の、6660株が被相続人とめの遺産となる。

第3特別受益

1  相手方両名は、別紙目録第1の7、8、12、13、17ないし22記載の土地についての亡伸之介ら4名及び相手方光三の上記各共有持分並びに本件会社の同人らの持ち株は、いずれも生前贈与にあたると主張するが、前記のとおり、いずれも固有財産であると認められる。

2  相手方両名は、被相続人金吾郎の死亡に伴い、○○生命保険相互会社から受取人を被相続人とめ、亡伸之介ら4名及び相手方光三とする合計2308万9216円の保険金が支払われたので、これが同人らの特別受益であると主張するが、C甲第99ないし102号証、第106ないし110号証によれば、この保険金は、前記解約、払戻しを受けた預金に組み入れられて、法定相続分どおり各人が取得していると認められるので、相手方両名の主張はその前提を欠き理由がない。

第4寄与分

1  被相続人金吾郎は、昭和10年以前に、兄晴信から独立して、ピンセットの製造販売の仕事を始めたこと、家内工業のため、亡伸之介ら4名及び相手方さちも小学校中学年頃から家事、家業の手伝いをしていたこと、戦後は、錠前等の研磨、ニッケル、真鍮の溶解、圧廷の仕事をし、朝鮮戦争の特需景気で多大の利益を得、やがてステンレスの圧廷、販売にかわり、会社設立後も亡伸之介ら4名が中心となり、上記のとおりの資産が形成されたこと

2  相手方さちは、昭和30年結婚するまで家事、家業の手伝いをしたものであり、相手方真紀子は、昭和39年高校を卒業してから昭和49年頃まで本件会社に事務員として、また、相手方光三は、昭和40年大学を卒業してから本件会社に勤務したものにすぎないこと

3  亡伸之介ら4名は、小遣いを貰う程度であり、会社組織となっでからも給与台帳上はその支結を受けていたことになっているが、実際は、生活費を貰う程度であって、余は被相続人とめが管理していたこと、ちなみに、被相続人金吾郎死亡当時、社長の被相続人金吾郎が105万円、副社長の被相続人とめが60万円、専務の亡伸之介、常務の申立人幸一郎、総務の申立人吾郎、部長の申立人仁一が各70万円であったこと、

以上の事実によると、亡伸之介ら4名には被相続人金吾郎の家業に従事して、その遺産の増加、維持について特別の寄与があったものというべきであるところ、上記のとおり、同人らにおいても土地の持分を取得している等の事情も認められるので、その寄与分は遺産総額(後記参照)のそれぞれ約10%に相当する2340万円と認めるのが相当である。

第5評価

1  鑑定人○○○○の鑑定結果及び鑑定人××××作成の意見書によると、第一次相続時の価格は、別紙目録第1の1、2記載の土地が2437万5000円、同3記載の土地(更地評価とする)が6110万円、同4記載の土地が106万円、同5記載の土地が104万円、同6記載の土地が441万円、同7記載の土地(持分8分の4)が108万5000円、同8記載の土地(持分8分の4)が339万円、同9記載の土地が2373万5000円、同10記載の土地が84万6000円、同11記載の土地が994万4000円、同12、13記載の土地(各持分6分の1)が148万5000円、同第2の1の建物が342万円、第二次相続時の価格は、同第1の1、2記載の土地が3315万円、同3記載の土地(更地評価とする)が8309万円、同4記載の土地が185万円、同5記載の土地が180万円、同6記載の土地が452万円、同7記載の土地(持分8分の4)が168万円、同8記載の土地(持分8分の4)が524万3000円、同9記載の土地が3671万円、同10記載の土地が130万9000円、同11記載の土地が1537万9000円、同12、13記載の土地(各持分6分の1)が345万円、同第2の1の建物が319万円、平成2年8月30日時点の価格は、同目録第1の1、2記載の土地が1億6965万、同3記載の土地(更地評価とする)が4億2525万円、同4記載の土地が554万円、同5記載の土地が541万円、同6記載の土地が475万円、同7記載の土地(持分8分の4)が251万円、同8記載の土地(持分8分の4)が783万5000円、同9記載の土地が5485万4000円、同10記載の土地が195万7000円、同11記載の土地が2298万円、同12、13記載の土地(各持分6分の1)が515万円、同第2の1の建物が110万円であると認められる。

2  鑑定人××××の鑑定結果によると、本件会社の株式の価格は、第一次相続時が1株7050円、第二次相続時が1万3262円、平成2年8月30日時点が6万0012円であると認められる。したがって、被相続人金吾郎の株式価格は、第一次相続時9418万8000円、第二次相続時1億7718万0320円、平成2年8月30日時点が8億0176万0320円となる。

3  別紙目録第3の1会員権の価格については、第一次及び第二次相続時の価格を240万円とすることで合意されており、平成3年3月の相場が280ないし290万円(C甲第116号証)となっているので、審判時の価格としては285万円とする。

4  別紙目録第5の動産については、鑑定人○○○○の鑑定結果による昭和61年8月14日時点の価格をもって、第二次相続時及び審判時の価格とすることに合意されており、したがって、鑑定人○○○○の鑑定結果及び上記合意によると、合計で、第一次相続時の価格が168万9000円、第二次相続時及び審判時の価格が206万1000円となる。

第6遺産の状況と各当事者の分割の希望

1  遺産の現状

別紙目録第1の1、2記載の土地上には本件会社が所有する同目録第2の3記載の建物があり、申立人トヨ、同友和、同健介、同吾郎、同仁一が居住している。

同目録第1の3記載の土地は、更地と考える。

同目録第1の4、5記載の土地は第三者に賃貸している。

同目録第1の7、8記載の土地は被相続人金吾郎と亡伸之介ら4名の共有となっており、同目録第1の12、13記載の土地は被相続人金吾郎、亡伸之介ら4名と相手方光三の共有となっている。

同目録第4の現金は、申立人幸一郎が保管しており、同目録第3の1の会員権及び同目録第5の動産は申立人らが管理している。

2  各当時者の分割の希望

(1)  申立人ら

別紙目録第1の1、2記載の土地は、申立人吾郎及び同仁一が共有取得、同目録第1の3記載の土地は、亡伸之介の家族と申立人幸一郎が共有取得、同目録第1の7ないし9、12、13記載の土地は、申立人らが共有取得、同目録第1の6記載の土地および同目録第2の1の建物(以下「長野の別荘」という。)は、亡伸之介の家族と申立人幸一郎が共有取得、本件会社の株式は申立人らが共有取得したい。

(2)  相手方ら

相手方さちは、同目録第1の1ないし3記載の土地と現金(代償金)を取得したい。

相手方真紀子は、○○○市○○字△△××××番の土地全部と現金(代償金)を取得したい。

相手方光三は、長野の別荘、同目録第1の7、12、13記載の土地と現金(代償金)を取得したい。

第7相続分の算定

1  第一次相続について

(1)  みなし相続財産の価額

第一次相続時の遺産価額は前記のとおり合計2億3486万7000円であり、寄与分合計9360万円(内訳、申立人トヨ1170万円、同友和、同美和子及び同健介各390万円、同幸一郎、同吾郎及び同仁一各2340万円)を控除して、1億4126万7000円となる。

(2)  各相続人の具体的相続分

被相続人とめ

1億4126万7000円 ÷ 3 = 4708万9000円

申立人トヨ

1億4126万7000円 ÷ 21+1170万円 = 1842万7000円

申立人友和、同美和子及び同健介

1億4126万7000円 ÷ 63+390万円 = 614万2300円

(百円未満四捨五入)

申立人幸一郎、同吾郎及び同仁一

1億4126万7000円 ÷ 21×2+2340万円 = 3685万4000円

相手方3名

1億4126万7000円 ÷ 21×2 = 1345万4000円

したがって、被相続人とめが20.0493%、申立人トヨが7.8457%、同友和、同美和子及び同健介が各2.6152%、同幸一郎、同吾郎及び同仁一が各15.6914%、相手方3名が各5.7284%となる。

2  第二次相続について

(1)  前記のとおり、被相続人とめは、特定財産を特定相続人に相続させる旨の遺言をしているところ.遺贈と認むべき特段の事情がない限り、当該遺産を当該相続人に帰属させる遺産の一部の分割がなされたのと同様の遺産の承継関係を生ぜしめるものであり、被相続人死亡の時に直ちに当該遺産が当該相続人に相続により承継するものと解すべきであり(平成3年4月19日最高裁判所判決)、したがって、当該遺産については分割の審判をする余地はなく、残余遺産があれば、その点を参酌して分割審判することとなる。そして、被相続人死亡の時に名宛人とされた相続人が死亡しているときは、その相続人がこれを引き継ぐことはなく、分割の対象となる遺産になる。

そうすると、申立人幸一郎、同吾郎及び同仁一は、本件会社の被相続人とめの株式を各1665株取得していることになり、残余の1665株が被相続人とめの固有の遺産となる。

(2)  第二次相続時の被相続人金吾郎の遺産総額は、3億7371万2320円であるから、被相続人とめの取得分は7492万6704円となる。その固有の遺産である株式の価格は2208万1230円であり、申立人幸一郎、同吾郎及び同仁一は、これと同額の遺産を既に取得していることになる。

(3)  みなし相続財産の価額は、1億6325万1624円である。

(4)  各相続人の具体的相続分

申立人友和、同美和子、同健介、相手方さち及び同真紀子

1億6325万1624円 ÷ 14 = 1166万0830円(円未満四捨五入)

申立人幸一郎、同吾郎及び同仁一

1億6325万1624円 ÷ 14×3-2208万1230円 = 1290万1261円

(円未満四捨五入)

(5)  後述するように、被相続人とめの固有の遺産である株式1665株は、本件会社を経営に当たっている申立人幸一郎、同吾郎及び同仁一に各555株ずつ取得させるのが相当であるから、被相続人金吾郎の遺産についての被相続人とめの取得分は、次のとおり、申立人友和、同美和子、同健介、相手方さち及び同真紀子が各3.12027%、申立人幸一郎、同吾郎及び同仁一が各1.48265%となる。

申立人友和、同美和子、同健介、相手方さち及び同真紀子

1166万0830円

申立人幸一郎、同吾郎及び同仁一

1290万1261円-736万0410円 = 554万0851円

申立人友和、同美和子、同健介、相手方さち及び同真紀子

20.0493×1166万0830円 ÷ (1166万0830円×5+554万0851円×3) = 3.12027%

申立人幸一郎、同吾郎及び同仁一

20.0493×554万0851円 ÷ (1166万0830円×5+554万0851円×3) = 1.48265%

相手方光三0%

3  以上により、被相続人金吾郎の遺産については、申立人トヨが7.8457%、同友和、同美和子及び同健介が各5.73547%、同幸一郎、同吾郎及び同仁一が各17.17405%、相手方両名が各8.84867%、同光三が5.7284%取得できることになる。

4  各人の具体的取得額

現在時点の被相続人金吾郎の遺産総額は、前記のとおり、15億1435万7320円と認めるのが相当であるから、各相続人の具体的取得額は次のとおりとなる。

申立人卜ヨ

15億1435万7320円×7.8457% = 1億1881万1932円

(円未満四捨五入、以下同)

申立人友和、同美和子及び同健介

15億1435万7320円×5.73547% = 8685万5510円

申立人幸一郎、同吾郎及び同仁一

15億1435万7320円×17.17405% = 2億6007万6483円

相手方両名

15億1435万7320円×8.84867% = 1億3400万0482円相手方光三15億1435万7320円×5.7284% = 8674万8445円

第8当裁判所の定める分割方法

本件会社を経営しているのは申立人幸一郎、同吾郎及び同仁一であること、共有持分については、他の共有者に取得さるべきであること、各相続人の分割方法に対する意向、代償金の支払能力、その他記録に顕れた一切の事情を総合勘案すると、本件遺産については次のように分割するのが相当である。

1  申立人トヨは、別紙目録第1の3記載の土地の共有持分4分の1、同目録第5記載の動産、同目録第3の2記載の株式170株を取得する。

2  申立人友和は、同目録第1の3記載の土地の共有持分6分の1、同目録第3の2記載の株式260株を取得する。

3  申立人美和子は、同目録第1の3記載の土地の共有持分6分の1、同目録第3の2記載の株式260株を取得する。

4  申立人健介は、同目録第1の3記載の土地の共有持分6分の1、同目録第3の2記載の株式260株を取得する。

5  申立人幸一郎は、同目録第4記載の現金、同目録第1の3記載の土地の共有持分4分の1、同目録第3の2記載の株式3555株を取得する。

6  申立人吾郎は、同目録第1の1、2記載の土地の共有持分2分の1、同目録第1の7記載の土地の共有持分8分の4、同目録第3の2記載の株式3855株を取得する。

7  申立人仁一は、同目録第1の1、2記載の土地の共有持分2分の1、同目録第1の8記載の土地の共有持分8分の4、同目録第3の2記載の株式3805株を取得する。

8  相手方さちは、同目録第1の4、9記載の土地、同目録第3の2記載の株式600株を取得する。

9  相手方真紀子は、同目録第1の5、10、11記載の土地、同目録第3の1記載の会員権、同目録第3の2記載の株式1000株を取得する。

10  相手方光三は、長野の別荘、同目録第1の12、13記載の土地の共有持分6分の1、同目録第3の2記載の株式1260株を取得する。

そうすると、各人の具体的取得額と現実の取得額との間に径庭があるので、その調整として、申立人幸一郎は相手方さちに対し2697万2017円、申立人吾郎は相手方真紀子に対し2529万8117円、申立人仁一は申立人卜ヨに対し23万6392円、申立人友和、同美相子及び同健介に対し各37万7390円、相手方さちに対し1062万7265円、相手方真紀子に対し1549万3365円、相手方光三に対し13万3325円を遺産取得の代償として支払うべきである。

第9結語

よって、被相続人両名の遺産について、各当事者の分割取得等を主文のように定め、手続費用中鑑定人に支払った503万円は、申立人らにおいて389万5715円、相手方両名において113万4285円支出しているので、法定相続分を参考にしてこれを償還させることとし、相手方さちは申立人幸一郎に対し15万円、相手方真紀子は申立人吾郎に対し15万円、相手方光三は申立人トヨに対し25万円、申立人幸一郎及び同吾郎に対し各10万円、申立人仁一に対し25万円を支払わせることとし、その余の手続費用は各自の負担とし、主文のとおり審判する。

(家事審判官 下山保男)

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